ビデオテープをはじめとした磁気テープは2025年までにデジタルファイル化しなければ永遠に失われかねない――。国連教育科学文化機関(ユネスコ)と国際音声・視聴覚アーカイブ協会は19年に「マグネティック・テープ・アラート」という警告を出しました。デッドラインの年を迎え、貴重な資料が消失の危険に直面しています。映像資料の保存を呼びかけてきた国立映画アーカイブの冨田美香・主任研究員に、各国の取り組みや今後の課題について聞きました。
――磁気テープはなぜ損失の危機にあるのでしょうか。
最大の理由は、再生機器の販売と保守サービスが終了したことです。磁気テープのメインユーザーは、1950年代からビデオテープを使っていた放送業界でした。90年代後半には、SONYのHDCAM規格の機器とテープが世界中で使用され、テレビのHD化を牽引(けんいん)しますが、2000年代半ばから、ディスクに記録する方式のカメラが登場し、制作工程がデジタルファイルで一貫していきます。
14年にSONYが、HDCAMの再生機器の販売を16年3月末で終了、保守サービスも23年3月末終了と発表し、ビデオテープの終焉(しゅうえん)が確定します。放送業界は、再生機器がダメになるとテープの映像を見られないため、テープに保存していた映像のファイル化を進めました。
つまりビデオテープはもう時…